
2025/02/04
日常の仏教語【勘弁】(かんべん)
「勘弁してください」「今回だけはご勘弁を」。私たちはときに、他人に謝罪することで許しを求めることがあります。しかし、自分の都合の悪い、苦しい状況を一時しのぐための表面だけの謝罪は、逆に人を怒らせてしまうことも。
実は、この「勘弁」という言葉、元々は仏教語とされています。本来、勘は「しらべる」、弁は「区別する」という意味で、「勘弁」とは、さとりの浅深を調べ、見極める問答を指しました。
禅宗と呼ばれる宗派では、師匠が弟子の修行の進み具合を確かめるために問いかけをする、「禅問答」というものがありました。師匠はその受け答えを通して弟子の円熟度を測ったとされ、その見極めが「勘弁」であったとされます。
この問答に合格できれば、次の修行に進むことを許されたことから、次第に「許す」という意味で使われるようになったとされています。
禅宗に限らず、仏教は苦しみから離れた「さとり」を目指します。そのためには、自分にとって都合が悪いと感じることであってもウソをついたり、ごまかしたりしないことが大切とされます。
私たちが生きていくなかで、自分の失敗などで他人に迷惑を欠けてしまい謝罪することは度々あると思います。そんなときは、ただその場を取り繕うのではなく、その原因としっかりと向き合って反省をしたうえで、謝罪することで、相手もきっと「勘弁」してくれるはずです。
(引用:浄土宗新聞 令和6年8月号)